危険なキス
 
「まだ忘れられてねぇの?あの男のこと」
「え……?」


それが、楠木のことを指していると理解するのに、少し時間がかかった。

先生はなおもあたしを睨むように見据えている。


「せっかく抱いてやったっていうのによ」

「あ…たりまえじゃないですかっ……。
 そう簡単に忘れられるわけないでしょ」

「ふーん……?」


あたしの言葉に、やっぱり納得いってないようで首をかしげる。

先生は、すぐ横にあるステンレスの棚に煙草を押し付けると、あたしの顎をとらえた。
 
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