危険なキス
 
「お、はようございます……」
「柊さん。おはようございます」
「……」


仮面かぶりまくりの爽やかな笑顔。

ここまで別人の顔で接されると、逆に気持ちがいい。
あたしは、あからさまに嫌な顔を向けて、そのまま校舎へと入った。


あとで絶対何か言われそう……。



教室に着いて、席に座ると、どっと疲れが押し寄せてきた。

だるい体を無理やり動かした登校。
湯浅先生を見た瞬間、すっかり忘れていたが、やっぱり体調は良くなっていなかった。


あたしは少しでもパワーを温存させようと、朝のホームルームが始まるまで、机で突っ伏して寝ることにした。


「せんせー、おはよー!」
「おはようございます」


しばらくして、必要以上に黄色い声が聞こえ、あたしはそれで目を覚ました。

顔をあげると、教卓には湯浅先生が。

ああ、ホームルームが始まるのか……。

そう思い、あたしは大きく息を吐くと、重たい体を起こした。
 
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