危険なキス
 
30分ほど車を走らせたところで、あたしの家に着いた。

先生は家の前に車を停めると、一度家を見上げた。


「家、母親いんの?」
「いえ。午前中はパートに出てますから。たぶんまだいないです」
「そ」


その答えを聞くと、先生は車のエンジンを切った。
そして運転席を降りると、あたしが乗っている助手席へ回り込む。

ガチャと音がして、ドアが開いた。


「ほら」
「あり…がとうございます」


あたしは普段見ない先生の優しさに、少し戸惑いながら、差し出された手に自分の手を重ねて車から降りた。
 
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