危険なキス
 
「帰るんですか?」
「ああ。そろそろ戻らねぇと、3時間目までに間に合わないしな」


時計を見ると、もうすぐ10時を示す。
確かに今から戻っても、結構いい時間だ。


「じゃあ、ゆっくり休めよ」
「あ、あの……」


先生が帰ってしまう前に、どうしても一言だけ言いたいことがあった。


途中で変態なことをされて、ずっと言いそびれていたけど…

これだけはちゃんと言葉にして伝えたい。



「あり、がとうございました」



あたしは、毛布を口元までかぶって、先生の顔を見つめた。


先生が心配してくれたのは変わりない。
だから心からのお礼を言わなくちゃ…。


「……」


先生は一度ドアへ向けていた体を、再びあたしへと向けた。
 
< 181 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop