危険なキス
 
「柊、ちょっといい?」
「え?……うん」


その日の授業が終わり、帰りのホームルームが終わると、楠木があたしの席へ来た。

そう言ってきた楠木の顔は、いつものおちゃらけた表情じゃなく、真剣な顔。
あたしは今朝見られてしまった、キスマークのことを問い詰められるんじゃないかと思って、内心ヒヤヒヤしていた。


「とりあえずここで」


連れてこられた場所は、校舎の奥にある空き教室だった。

よっぽど人に聞かれたくないことを話すのか、楠木は教室に入るとドアを閉めた。

密室に男子と二人きりということに、ちょっとだけ抵抗はあったけど、相手は楠木だし、麻衣子の彼氏、ということもあって、あたしは深く警戒心をもったりはしなかった。
 
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