危険なキス
 
「なんで、って何が?」


周りに誰も生徒がいないこともあり、先生の口調が素になる。
だけどその目は、どことなく冷たかった。


「何が…って……」


聞き返されて、言葉に詰まる。

あたしはいったい、何を言われたかったんだろう……。



(お前、何勝手に触られてんの?)


また、そんなふうに言ってもらいたかったんだろうか。


先生は階段を上がり、あたしの目の前で止まる。

そしてどこかせつなげな目で笑いかけると……


「よかったじゃん。
 もう忘れる必要なんてないんじゃねーの?」

「…っ」


突き放すように言われた。

 
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