危険なキス
「やっぱ暑いねー!」
お昼時間はあっという間にやってきて、あたしたちは購買で適当にパンを買うと、人の少ない中庭へとやってきた。
春や秋なら、それこそ外で食べる生徒でにぎわっているが、この季節となるとそんな生徒はほとんどいない。
案の定、中庭にはあたしたちだけだった。
割と涼しめの木の下にあるベンチを見つけると、あたしたちはそこへ座った。
「一番乗りだねっ」
そう言って笑う麻衣子は、いつもと変わらないように見えたけど、よく見ると、麻衣子の目は赤く充血していて、きっと昨晩泣いたんだろうな、ということがうかがえた。
「……麻衣子…」
「昨日ね」
いたたまれない気持ちになり、麻衣子の名前を呼んだけど、それを制するように麻衣子が話し始めた。
「昨日……
拓也にふられちゃったんだー……」
麻衣子はただ笑って、そう言った。