危険なキス
 
その言葉を聞いて、なんて声をかけたらいいのか分からなかった。


楠木は麻衣子にどこまで話したのだろうか。

ただふっただけ?
それとも、自分の本当の気持ちを話したの?


何も言えないあたしを察したのか、麻衣子は言葉を続けた。


「紫乃……
 あたしね……知ってたの。
 拓也が紫乃のこと、好きだってこと……」

「………え…?」


麻衣子から出た言葉は、あたしが予想もしていなかったことだった。


「本当は最初から分かってた……。
 分かってて、拓也に猛アタックしてた。
 だからもしかしたら、すぐにふられるかも、って少しだけ覚悟してたんだ」


「麻衣子……」


無理して笑って言う麻衣子に、こっちが切なくなって泣きそうになった。

だけど麻衣子が必死に伝えてくれているんだから、ここであたしが泣くわけにはいかない。
 
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