危険なキス
「拓也が告白の返事をOKしてくれたのは、紫乃と3人でカラオケに行ったとき。
先に帰る紫乃を見て、慌てて拓也が追いかけた……。
だけど紫乃はあたしのために拓也を突き放して帰った」
(柊っ……)
紫乃を乗せたエレベーターが閉まると同時に、悔しそうに嘆く楠木くん。
あたしはすぐに楠木くんのもとへ駆けた。
(楠木…くん……)
(浜崎……)
(もう…やめようよ……)
楠木くんが、紫乃を好きだってことくらい、すぐに分かった。
だけど惹かれていく自分を止められなくて、どうしても諦められなかった。
ねえ、あたしを見て……。
紫乃はあたしに協力しちゃうくらい、あなたのことなんて何とも思ってないんだよ……。
(あたしなら、いつも楠木くんのこと好きでいるよ……?)
(……)
(もう…辛い恋はやめようよ)
そして楠木くんは、あたしの想いに応えてくれた。
いや……
逃げに来てくれたというほうが正しいのかもしれない……。