危険なキス
「あたしが一番じゃないって分かってたけど……でもそれでも嬉しかった。
これからはあたしが、彼女として拓也の傍にいられるって思ったから。
……でも…」
そこまで話すと、麻衣子の瞼からついに溜まりきれない大粒の涙が零れ落ちた。
「拓也の心の中心は、いつも紫乃だったよ。
あたしは名前だけの彼女。余計に辛いだけだったんだっ……」
じりじりと太陽が照りつける中、痛いほど麻衣子の辛さが伝わってくる。
あたしが楠木に感じていたこと…
本当はいつも麻衣子も感じていたんだ……。
「ねえ、紫乃……」
麻衣子は涙をぬぐうと、あたしの顔をじっと見つめた。
「紫乃は……拓也のこと、どう思ってるの?」
「……え…」
そう言われて、あたしは返答に困った。