危険なキス
 
「まだあたしには何も言わなくてもいいから……だからこれだけは聞いて。

 もしも……もしも紫乃が拓也のことが好き、って言うんだったら……
 もうあたしに遠慮しないでよ。

 拓也が好きなのは紫乃なんだよ。

 だから本当に両想いだったら、ちゃんと伝えるべきだよ」


「……まい…こ……」


じっとあたしを見つめて、まるで懇願するように言葉を放つ。


それなのにあたしは、言葉が詰まって、何も返すことが出来ない。


「………ったくもう……」


そんなあたしに、麻衣子は呆れたようにため息をついた。


「紫乃。今日の帰り、二人でどっか遊びに行こう!」
「え?」
「一回、全部男のこととか忘れようよ!!
 パーッと弾けて、考えるのはそれからにしよ?」


笑顔を向けて、そんな誘いをしてくれる麻衣子。

あたしは断る理由も見つからなくて、苦笑しながら頷いた。
 
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