危険なキス
「……なんですか?」
にこにこと笑って振り向く先生に、あたしは悲しみしか溢れてこなかった。
こんな先生が見たいんじゃない。
いつもみたいな、意地悪な先生を見たいんだ。
「なんで……そんな敬語なんですか?
仮面、かぶる必要ないじゃないですか……」
あたしは先生の素を知っている。
だから今さら、そんなふうに接する必要なんてない。
だけど先生は、
「もう…あなたもただの生徒ですから」
残酷な言葉を、吐くだけだった。