危険なキス
「どういう……こと?」
突然現れた楠木に、思わず涙も引っ込む。
そんな返答をされる楠木も、意味が分からないと言ったような顔をした。
「お前が話がある、って麻衣子から聞いて来たんだけど」
「え?」
そんなこと、一言も言ってない。
というか、その本人の麻衣子はどこに行ったわけ?
「いや…言ってないけど……」
「え?」
否定するあたしに、楠木も驚く。
そしてしばらくして、ようやくお互いに気付いた。
あたしたちは、麻衣子にはめられたのだ。
「……ったく…麻衣子のやつ、余計なことしやがって……」
それに気づいた楠木は、力が抜けたのかその場にしゃがみ込んだ。
もしかしたら、あたしからの呼び出しだと聞いて
告白の返事をされるのかと緊張していたのかもしれない。
あたしは、突然用意された、二人きりのシチュエーションに、いまだにどうしたらいいのか分からないでいた。