危険なキス
「……ごめん」
「いや、仕方がねぇし!」
謝ると、慌てて否定する。
あたしは相変わらず、他大を目指した受験組。
だけど楠木はこのままうちの付属の大学に行くので、学校である程度の成績をとっていれば、そのまま試験なしに上がれるのだ。
「じゃー、頑張れよ」
「うん」
そして、一言励ましの言葉を言うと、しぶしぶ教室を出て行った。
予備校は、学校が終わってから直接行く。
と言っても、そのまま行ったらまだ少し早いので、いつも学校で勉強をして時間をつぶす。
あたしは机の中のものを鞄にしまうと、いつも通り図書室へ向かおうとした。
だけど……
「あっ、っと……」
「わっ……」
教室のドアから出ようとした瞬間、走って戻ってきた楠木と出くわす。
危うく、追突するところだった。