危険なキス
 
「そんなんじゃ?」
「……そうだよっ。寂しいに決まってんだろっ」
「ふふっ」


開き直ってそう言ってくれる楠木に、思わず笑みがこぼれた。

そう思ってくれるのは、やっぱり嬉しい。


「あたしも」
「え?」
「あたしも寂しいよ」
「っ……」


楠木は一瞬目を丸くさせると、嬉しそうに目を逸らした。

そんな楠木が、可愛くて仕方がない。
男の人に可愛いなんておかしいかもしれないけど、楠木にはその言葉が似合う。

なんてことを言ったら、たぶん怒るんだろうな。


あたしは再び問題集へと目を落とす。


「楠木も他大受ければいいのに」


冗談っぽく少し笑って言うと、ふいに髪を触られる感覚を感じた。

顔をあげると、楠木があたしの髪をすくっている。
 
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