危険なキス
あたしともう一人の学級委員は、特別仲がいいわけでもないので、「じゃあ」という挨拶だけして別れた。
そいつはちゃっかり鞄を持ってきていたので、そのまま直帰。
あたしは教室に鞄を置きっぱなしだったので、一度教室に戻ろうとした。
だけどそのとき……
「柊さん」
まさかの、湯浅先生から声をかけられた。
「は、い……」
「僕からももう一個連絡事項が……って、戸谷くんは帰っちゃいましたか?」
「みたいです」
「じゃあ、柊さんだけでも。ちょっとプリントを取りに行くので、一緒にきてください」
「……はい」
あたしは、言われるがまま先生のあとについていくことにした。
先生の一歩後ろを歩く。
あたしは、先を歩く先生の背中をじっと見つめていた。
まるで普通に話しかけてきた先生。
もう先生にとって、あたしは本当に、ただの生徒なんだな……。
悲しくても、そう思わざるを得なかった。