危険なキス
 
「言えよ。俺のことが好きって。認めちまえ」


今度は笑うのをやめ、見据えるようにあたしを見つめる。

ドクンドクンと、心臓がうるさいくらい鳴っていた。


「ちゃんと言えたら、キスしてやる」

「なっ……」


あくまでも上から目線。

カチンとくるのに、怒れない。


だってもう…
言葉が喉まで出かかってる。


「紫乃……」

「…っ」


頬に手をあて、あたしの名を呼ぶ先生。

涙がじわりと浮かんできた。



認めたくなんかない。

こんな俺様で
女たらしで
二重人格な男。

好きだなんて思いたくない。


だけど……







「………す…き……」







ここにある想いは、確かだ。

 
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