危険なキス

　
楠木は、覚悟はしていたのか、そんな驚いた顔をしていない。
だけど納得はできていないみたいで、唇を噛むと悲しそうな目であたしを見た。


「……なんで？もしかして……あの時のキスが原因？」
「ううん、そんなんじゃない」


楠木にキスされそうになったから、別れたいんじゃない。

それ以前の問題だから。


「じゃあ、どうして？」
「……」


問われる質問に、答えられない。

そんなあたしに、楠木は言葉を続けた。


「もしかして、ほかに好きなやつできた？」

「…っ」


返事は出来なかったけど、目の色を一瞬変えてしまった。

それに気づいた楠木は目を大きく見開くと、再び伏せ…


「そっか……」


力なく答えた。