危険なキス
 
「俺はお前の気持ち、ちゃんと確かめる前に逃げるように麻衣子と付き合ったけど……。
 そのキスマークをつけたやつは、俺がいない間もずっとお前の傍にいたってことだろ?
 それじゃあ、敵わねぇの当たり前じゃん……」

「あ……それ、は……」

「ほんと……バカだよな…。
 逃げて勝手に諦めてた俺の自業自得。
 そいつにお前のこと、とられても当たり前だよ……」


楠木は無理やり笑顔を作ってあたしに向けた。

その笑顔が痛々しくて、あたしは何も言うことが出来なかった。


「……柊…」


そして立ち上がると、あたしの席の前に来る。



「別れようぜ」

「……っ」



涙を浮かべた笑顔で、きっぱりと言ってくれた楠木。

その潔さに、ズキンと胸が痛くなった。



「ごめ…なさいっ……」
「いいって!謝ることじゃねーから!むしろ悪いのは俺!!」
「……っ」


あたしはぶんぶんと首を振って、ひたすら謝った。

だけどいつまでもそんなことは言ってられない。


落ち着いて顔をあげると、楠木はまた微笑んだ。



「それじゃあ、また明日から友達ってことで」

「……うん」



あたしの淡い初恋は

自ら終止符を打った。

 
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