危険なキス
 
楠木が教室から出て行っても、あたしはしばらくその場から動けなかった。


泣くのは間違ってる。
だから絶対に泣かない。

溢れてくる涙を、上を見上げながら必死に堪えていた。


だけどしばらくして、誰かの気配を感じた。

振り返るとそこには……



「麻衣子っ……」



もうとっくに帰ったと思った麻衣子の姿があった。


「……ごめん…。話…聞いちゃってた……」


麻衣子の言う「話」とは、きっとあたしと楠木の別れ話だ。

麻衣子にもちゃんと話すつもりだったから、それを聞かれてマズイとは思わなかった。


「あたしにも……ちゃんと話してくれる?」
「うん……」


麻衣子は、あたしの席の前に座った。
 
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