危険なキス
 
湯浅奏人の本性を知ったのは、1ヶ月ほど前。
あたしと麻衣子が、学校帰りにプラプラと買い物をしていたときのことだった。


「ねえねえ、あれって修羅場?」


テイクアウトのコーヒーを片手に、ツンツンとあたしの服を引っ張る麻衣子。
あたしもつられて、麻衣子が見るほうに目をやった。

そこには、


「ねえっ、お願いだからそんなこと言わないでよっ」
「……」


女の人が、男の人に泣いてすがる姿があった。


特別、凝視するつもりはなかったけど、麻衣子は興味津々であたしに耳打ちをする。


「別れ話かなあ?ってか、男の人、かなりのイケメンじゃない?」


最初、男の人は後姿だから気づかなかった。
だけどそう言われて再び視線を戻し、その瞬間、ちらりと見えた横顔にあたしの時は止まった。



「……湯浅…先生……?」
 
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