危険なキス
「せん……せい……?」
「今日はもう帰れ。
悪いけど、抱く気、失せたから」
あたしに背を向けたまま、突き放すように言われた言葉。
これは……
あたしも、先生にとって
大勢の女の中の一人のつもりだったということだろうか……。
「あ、の………」
「服を着ろ」
「……」
何を言ったらいいのか分からず、言われるがままに服を着た。
部屋の中には沈黙が流れるだけ。
「あたし……帰ります……」
これ以上、ここにいるのが耐えられなかった。
机に出しっぱなしだった参考書類を鞄にしまい、帰りの身支度をする。
部屋を出ようと靴を履いていると、先生が玄関まで来た。
「今日はありが……」
「お前が俺に、どんな幻想いだいてるか知んねーけど……」
遮るように、先生が言葉を吐く。
顔をあげると、そこには初めて素を見たときの冷めた顔の先生で……。
「俺が一人の女だけを好きになることはないから」
それは、フラれたも同然の言葉だった。