危険なキス
17章 隠されたもの
それから、バカみたいに勉強に専念した。
T大学に行きたい、という気持ちは失せたけど、でももともと先生関係なしに目指していた場所。
だからお母さんの希望を叶えるための意味でも、あたしは完全に勉強だけの人間になろうと思った。
「おはよー!」
「おはよ」
月曜日、いつも通り学校へ行った。
学校までの道を歩いていると、後ろから麻衣子に声をかけられる。
「また1週間始まったねー」
「そだね」
「……なんか紫乃、元気ない?」
いつも通りにしているつもりだけど、麻衣子にはなんとなく伝わってみたいだった。
だけどこれ以上心配されたくなくて、首をかしげると
「何が?」
「あ、ううん。なんでもないならいいんだ」
と、ごまかされてくれた。
一緒に片想い頑張ろう、って言ってくれたけど、あたしはもう頑張る必要なくなっちゃったよ……。
ごめんね。
心の中で、麻衣子に謝った。