危険なキス
 
「え……?」


あたしは思わず振り返ってしまった。
そこには、苦笑した神田先生。


「だけどあいつね、ちょっと背負ってるものが重すぎて……
 それで素直になれないだけなんだよ。
 でも君なら、それを溶けるんじゃない?」

「……」


そう言われても、どうしたらいいのか分からない。

先生の背負っている重いものが、いったいなんなのか想像つかなかった。
最初から女遊びが激しい人ではなくて、そうなったには何か理由があったことすら知らなかったんだから……。


「でもそれを知ったら、君も怖くなっちゃうかもしれないから……
 だから本当に、それを聞く覚悟が出来たら、もう一度俺のところにおいで」

「………はい…」


わざわざそう言ったということは、簡単に聞き入れられるものではないんだ。

だからこそ、今この場で問い詰めるのはやめた。


「じゃ、あまり遅くならないうちに帰りなよ。
 あ、そうそう」


先生は先を歩くと、背中を向けたまま言葉を続ける。


「ここのゴミ箱にないんだったら、ゴミ捨て場が一番可能性が高いと思うよ」


それだけ言うと、今度こそ去って行った。
 
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