危険なキス
「……」
女の人の息遣いが吐き出されるとともに、唇を離す。
そして至近距離のまま女の人を見つめた。
いや……
睨んでいると言ったほうが正しいかもしれない。
「これで最後な。もうかかわんな」
その言葉と瞳には迫力があり、女の人はそれ以上何も言うことが出来なかった。
固まってしまっていたのは、あたしたちも一緒で、湯浅先生がこっちに歩いてくるというのにその場で動けないでいた。
マズイ…!と思った時には、もう立ち去れないほどの距離で、顔をあげた湯浅先生と目が合う。
「……っ」
湯浅先生はあたしの顔を見た。
そして、ニヤッと笑うと、そのまま横を通り過ぎて行った。
「……何…あれ……」
先生の姿が見えなくなって、ようやく麻衣子が声に出す。
あたしが麻衣子に説明できるようになったのは、それから10分後のことだった。