危険なキス
 
「先生?」


放課後、ある程度の時間が過ぎたころ、あたしは物理準備室に行った。

そこには、すでに椅子に座っている湯浅先生がいた。


「あの……なんですか?」


正直、まだ気まずいものはあった。


先生の部屋に行って、気持ちを聞いたのに「帰れ」と言われたあの日。
あれから、写真のことで呼び出されたときにちょっと話したけど、それ以外で面と向かって話したことはない。


だからこうやって呼び出されたことが、いったい何を意味するのか分からず、内心ドキドキとしていた。


「上履き……どうした?」
「え?」


まさかの質問。

あたしは思わず、両足をばたつかせた。


「こ、これは……ちょっと家に忘れちゃって……」
「こんな中途半端な時に、持って帰るやつはいねぇだろ」
「……」


ごもっともな答え。

何も返せなかった。
 
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