危険なキス
「紫乃……」
「先生のことが好きな女子がたくさんいるのは最初から分かってます。
こうなることくらい、予想してました」
「……」
これは、周りの女子が勝手にしていること。
決して、先生がしていることなんかじゃない。
それでも先生の顔は、浮かないままだった。
「紫乃」
「なん、ですか?」
切なげな目で、あたしを見つめる先生。
距離は開いたままだった。
「もう、こんなふうに特別扱いするのはやめるな」
「え?」
それは前にも言われた言葉。
だけどあの時よりも、ずっと重い言葉に聞こえた。
「お前も他の生徒と同じだ。
だからこうやって呼び出すことももうしないし、家にも呼ばない。
勉強は、予備校の先生に教えてもらえ」
突き放された言葉。
悲しくて、涙がじわりと浮かぶ。
「……んで……」
「え?」
「なんでそんなこと言うんですか!!」
思わず、声を張り上げた。