危険なキス
 
「それで?俺のところに来たってことは、奏人のこと、覚悟できたってこと?」

「はい……。
 教えてください。湯浅先生のこと……」


あたしは最後にされたキスのことを思い出した。


今までたくさんキスはされたけど、あんなに悲しみで溢れたキスは初めてだった。

こっちが泣きたくなるような、切ないキス。
先生の苦しみが伝わってきた。


「先に言っておくけど、これを聞いて、奏人のことが嫌になっても知らないよ?」
「なりません。なるつもりもありません」
「そっ」


きっぱりと答えるあたしを見て、神田先生は満足そうに笑った。

そして真面目な顔になると、口を開いた。



「あいつね、あんなんでも昔は大本命の彼女がいたんだよ」



それは……

あたしが聞くには、とても胸の痛い話だった。
 
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