危険なキス
あたしは一人、職員用の駐車場で待っていた。
今日は予備校をさぼる覚悟だ。
あえてあまり見えない位置に隠れて、待ち人を待つ。
そして6時を過ぎたところで、一人の先生がやってきた。
「……先生」
「し……柊さん……」
紫乃、と呼びかけて、名字で呼びなおす。
そんな姿に、ちょっとだけ笑えた。
「どうしたんですか?こんな時間まで」
「ちょっと言いたいことがあって……」
「……なんですか?」
あくまでも、教師の仮面をかぶって受け答えをする先生。
だけどもう、そんなのは関係なかった。
「あたし、諦めるつもりありませんから」
真っ直ぐと目を見つめながら、自分の意思を伝える。
先生は何も言わなかった。
「先生の気持ちが、0じゃないことくらい、分かってるので」
「……」
「だから、0にならない限り、あたしは諦めません」