危険なキス
我ながら、かなりの悪あがきだと思う。
正直なところ、先生の気持ちなんてまるで分からない。
あたしのことを、ちょっとでも好きと思ってくれるなんて、都合のいい考えかもしれない。
だけど最後にしてくれたあのキスは、
先生からの悲痛な想いが伝わって
まるで「助けてくれ」と叫んでいるようだった。
楠木に失恋をして、何もかもが嫌になっていた時
いつも気を紛らわしてくれた先生。
だから今度はあたしの番だ。
何年もの間、心に刻み込まれた傷を癒すのは、相当な想いが必要かもしれない。
でもこのまま、何もしないで逃げるなんて嫌だ。
だから……
あたしは先生の前へ踏み出す。
そして……
「!!」
先生へ、触れるだけのキスをした。
「覚悟、しといてください」
ニコッと笑顔を向けると、先生のもとから去った。