危険なキス
 
あれから少しの間、眠ってしまったらしい。


今何時間目なんだろう……?


物理は2時間目。
時計を見たくても、カーテンがしまっているので分からなかった。


そろそろ戻らなくちゃ……


と思っていた矢先、保健室のドアが開く音がした。

思わず、起こそうと思っていた体を再び布団にくるませる。
そして……


「………柊さん」


カーテンが開くと同時に、今一番聞きたい人の声が聞こえた。


あたしは、もぞりと体を動かしたものの、振り向くことは出来なかった。


「紫乃」
「……」


今度は名前で呼ばれた。


あたしは静かに息を吸い込むと、口を開いた。



「……すみません……。
 みんなの前で、あんなこと言ってしまって……」

「いや」



先生は、一切責めるようなことは言わなかった。
 
< 348 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop