危険なキス
 
「だからっ……、同じことを繰り返すのが嫌という理由で逃げないで。
 あたしとその子は違うからっ……!」

「紫乃……」


先生はあたしの名を呼んだ。

その瞬間、ビクッと体が震えた。


「こっち向けよ」
「だ、だめですっ……」


今向いたら、涙でぐしゃぐしゃな顔を先生に見せてしまうことになる。

あたしは布団を顔までかぶろうとした。
だけど……


「いいから向け」
「あっ……」


その手をとられ、無理やり先生のほうへ向かされてしまった。

先生と目が合った瞬間、カァッと顔が熱くなる。


「すげぇ泣き顔。
 説得力ねぇな」


先生は、あたしの顔を見て、呆れたように笑った。
 
< 350 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop