危険なキス
21章 突き破った壁
土曜日は、あっという間に来てしまった。
あたしは勉強道具一式を鞄に詰めると、お母さんに「図書館で勉強してくる」と伝え家を出た。
そしてこの前と同じ待ち合わせ場所の駅。
学校では先生と顔を合わせているものの、素の先生と話すのはあれ以来初めて。
あたしは心臓をバクバクさせて、待っていた。
しばらくすると、見慣れた車が停まった。
「乗れ」
「…はい」
相変わらずな命令口調。
少しでも甘い言葉を期待した自分がバカだったのかも……。
「襲われたいの?」
「へ?」
車に乗り込むなり、突然の言葉。
あまりにも突拍子のない発言に、間抜けな声を出してしまった。
「そんなに足出して、俺に触られたいんだろ」
「ちっ、違いますって!!」
セクハラ発言も変わらない。
あたしは思わず、わざとらしいため息をついた。