危険なキス
「紫乃も大変だね……」
「ほんとだよ……」
あたしは、これから変わらず週に3回ある家庭教師のことを思うと、ため息をつかずにはいられなかった。
「なになに?なんの話?」
あたしたちが暗い空気で話していると、それを打ち壊すかのように楠木がやってきた。
「紫乃の家庭教師の話だよ」
「カテキョ?そんなんやってんだー。で?それがどうした?」
「あのね……」
「麻衣子!言わなくていいから!」
あたしは、楠木に説明しようとした麻衣子を、即座にとめた。
なんとなく知られたくなかった。
あたしの身近に、そんな男がいるってことを。
楠木には知られなくない。
「なんだよ、それー。俺だけ除け者?」
「そう」
と、応えてから、しまった!と嘆いた。
どうしてあたしは、いつもこう可愛くないことばかり言っちゃうんだろう…。