危険なキス
 
「俺の外見だけで寄ってくる女。
 こういう女が、自分の気に入らないやつを陥れたり、いじめたりする。
 だったら逆に俺が、遊んでやろうと……。
 好きにならせて、散々もてあそんで捨ててやる。
 そんな最低な答えにたどりついたんだよ」


「……」


確かに先生の言っていることは最低だ。

むちゃくちゃだし、道理に合わない。

だけど、先生がそうしたい気持ちも分からなくもなかった。


「だから誰にも本気で好きにならないって決めてた。
 毎日、適当に気が向いたやつを相手してれば、って……。
 もちろん、結婚願望とかもさらさらねぇから、就職もする気もない。
 自分が、そのときだけ食べていける金さえあればいい、ってな」


先生が、いい大学に出ているのに、就職していない理由。
それが今、ようやく分かった。


いい大学に入ったのは、女をバカにするため。

就職しないのは、その必要性を感じなかったため。


だからあたしの前に、
ただの家庭教師として現れたんだ……。

 
< 366 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop