危険なキス
 
「だけどお前に出逢って……少しずつ変わっていったよ」

「え……?」


それは思いがけない言葉。

思わずあたしは振り返った。


「お前に素を見られて、そのまま素で接しようとしたのがきっかけ。
 今まで散々、女にちやほやされる人生送ってきたのに、あからさまに俺を毛嫌いする女。
 だけどからかうのがおもしろくて、ついついちょっかい出したくなるのな……。

 かと思えば、急に俺に『抱いてみろ』なんて言うから」


「そっ、れは先生が………忘れさせてやろうか、なんて言うから……」


「でもそのあと、挑発したのはお前だろ?」


「そうですけど……」


今でも、あの時の自分が信じられない。


だけどそれほど、苦しくて……。
そしてそれ以上に、自信に満ち溢れている先生が嫌だったんだ。


その自信満々な顔を、崩したかっただけ……。


それだけだったはずなのに……。
 

 
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