危険なキス
「抱いてやった、って言うのに、再会してからも相変わらずな態度。
かと思えば、たまに見せる素直にお礼を言ったり、謝ったりする顔……。
いつのまにか、そんなお前の表情に振り回されてた……」
「先生……」
初めて聞いた、先生があたしに惹かれていく気持ち。
そんなふうに、想ってくれていたなんて知らなかった。
「お前のことが、特別だって思えば思うほど、突き放さなければいけないって思った。
大事だって思うんなら、絶対に手に入れてはいけない。
お前が嫌がらせを受けてるって知ったとき、どうしようもないほど焦ったよ。
また同じことが繰り返される、って……。
だから今度こそは、もう二度と、俺に近づけさせない気だった。
だけど……」
先生は急に、吹き出して笑う。
あたしはそんな様子を、意味の分からないまま見上げていた。
「お前の真正面からぶつかってくるのには正直困った。
あげく、嫌がらせしている相手にすら、授業中に啖呵きるしよ」
「だ、だって………ムカついた、から……」
「それであんな堂々とやるとはな…。
でも……そのおかげで、ようやく気付けたよ」
そう言って、先生はあたしの髪を手に取った。