危険なキス
「柊が、俺と別れるって言ったとき……お前、好きなやつがいるって、言ってたよな」
それは、想像していた質問と同じだった。
楠木は、もう気づいているんだろう……。
「お前が好きなやつって…もしかして………」
「……その、もしかして、だよ」
あたしは、名前を出される前に自ら肯定した。
「……そっか…」
楠木も、とくに聞き返すことなく納得した。
「ごめん……」
「あ、いや!べつに謝ることじゃねーよ」
「……でも…」
「好きになっちまったもんはしょうがねぇだろ」
楠木は笑った。
苦笑いで…。
「でも…そっかぁ……。
相手があんなやつじゃなー……絶対に俺、勝ち目ねーじゃん」
わざと明るく言いながら、窓辺へと目線を向ける。
あたしもつられて、そっちを見た。