危険なキス
 
「なんとなく、さ……
 初めてあいつに会ったとき……予感してたんだ。
 柊はこの男のこと、好きになるんだろうな……って」


楠木と先生が初めて会ったのは、偶然出くわした電車。

今思い返すと、あの時から楠木は、あたしにいつも何か言いたげだった。
だけど先生が現れたことによって、それがストップされたんだ。


「ほんとにそうなるとはなー。
 でも……ビビってないで、もっと真正面からぶつかっておけばよかった…。
 逃げた俺の完全な負け、ってことだな」

「……」


「はぁっ……。
 相手があいつだって分かって納得した。
 ……聞きたかったのはそれだけだからさ」


楠木はニカッと笑顔を向けた。

あたしはどう反応したらいいのか分からず、複雑な顔で楠木を見返していた。


「……それじゃあ、俺は帰るな。
 しばらく大変だろうけど、あと少しの間頑張れよ。卒業するまで……」

「うん……」

「じゃ!」


そして楠木は鞄を手に取ると、出入口のほうへ向かった。


「……楠木!!」


あたしは思わず、楠木を呼び止めた。
 
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