危険なキス
「ありがとう……」
すでに誰もいなくなった教室で、もう一度お礼を言う。
本当に本当に嬉しかった。
ずっと好きだった楠木との両想い。
もしあたしが、臆病じゃなく、麻衣子にも堂々と言えたのなら
あたしは今、楠木との道を歩いていたかもしれない。
だけど……
「……またこんな時間まで残ってたんですか?」
振り返ると、そこにはあたしの選んだ人。
「ちょっと……大事な人とお別れをしてたんです」
「……それはちょっと妬けますね」
仮面をかぶったまま、一歩ずつ教室の中へ入ってくる。
「あたしには……もう譲れないほど、好きな人がいるので……」
「そうですか」
学校では、決して素を見せない。
あたしだけが知っている意地悪な先生。
この人を選んだことに
後悔なんてひとつもしていない。