危険なキス
「化粧ポーチ?中学生で、まだはえーだろ」
「分かってないなぁ…。イマドキの中学生なんて、もう化粧なんて当たり前だよ。
たとえしない子でも、リップ入れたり鏡や櫛くらい持ち歩くでしょ」
「そんなもんかぁ……」
男子目線だと、どうしてもその気持ちが分からないらしく、頭をポリポリとかく楠木。
だけどちょっとだけ考えて、
「よし!じゃあ、それにするか!」
と、あたしからそのポーチを受け取った。
「え、本当にそれでいいの?」
「柊のこと信じる」
「なんかプレッシャーだなぁ…」
「大丈夫だって。ありがとな」
そして、さっさと会計を済ませに行った。
可愛らしくラッピングしてもらった袋を、少し照れながら受け取る楠木は、普段学校で見ない姿。
あたしはにやけてしまいそうな自分を、なんとか抑えていた。