危険なキス
 
「ほら、前にちょっと話に出た……家庭教師の人」
「ああ!」


そう言われて、楠木も納得して声をあげた。

あたしも、内心はかなり戸惑っているけど、世間体上、先生にも楠木を紹介する。


「クラスメートの楠木くんです……」
「そうですか。よろしく」
「お、あ、はい!よろしくです!」


お決まりの仮面の顔で接する先生に、思わずひきつり笑いが出そうになった。

ってか、何をどうよろしくするの…。


そんなことをしていたら、あっという間に楠木が降りる駅についてしまった。


「そういえば、楠木、さっき何か言いかけてなかった?」


確か、湯浅先生の姿を見つける前に、急にかしこまった感じで話を切り出された気がする。


「いや、なんでもねぇや。
 それじゃあ、また明日学校でな!」

「あ、うん。また明日」


そして笑顔で手を振ると、一人電車を降りて行った。
 
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