危険なキス
 
「まだしてません!」
「まだ、って……。するつもりなんだ?」
「……」


「そんなことない!」という反応を期待してたのか、黙ったあたしに先生は不思議に思って顔を覗き込んできた。
あたしは一瞬、先生の顔を見てしまったものの、すぐに目線を逸らした。


「子供は、恋を楽しくできていいねぇ」
「楽しくなんかないです」
「ってことは、うまくいってねぇんだ?」
「…っ」


どうしてこの人は、いちいち痛いところばっかり突いてくるんだろう。

これが大人の男というものなんだろうか。
先生といると、取り乱してしまうばかりの自分で嫌だ。
 
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