危険なキス
あたしはとっさに、近くにあった自販機の影に身を隠した。
今は二人が一緒にいるところに、出くわしたくなかった。
二人が付き合っている事実を、受け入れたくなかった。
ホームの端のせいか、ここまで来ている生徒はいなく、二人の声がやけに耳に響く。
あたしは目を閉じながら、ただその声を聞いていた。
「ねえ、拓也………」
「え、こんなとこで?」
「いいじゃん」
ふと、そんな声が聞こえた。
勘が働いたんだと思う。
その会話が聞こえた瞬間、あたしは不覚にも顔をあげ、二人の様子を見てしまった。
目線の先には……
「ちょっ……」
「ふふ、奪っちゃった」
キスを交わす二人だった。