Produce!〜高校デビューしませんか?〜
先輩の家は、この街から歩いて10分で着くというので、私と柊くんは近くのカフェで待つことにした。
柊くんはブラックコーヒー。
私はキャラメルラテ。
ほのかに香る甘いラテの匂いが、私の鼻を刺激した。
席には向かいあって座った。
教室と同様に、どこかから聞こえてくる柊くんに対するコメント。
『あの人、格好良い』
『彼女、羨ましい』
やっぱり悪い気はしなかった。
「先輩、何かワケありっぽいね」
コーヒーを一口、口に運んだ柊くんが私に呟くように言った。
「あー、ね。確かにワケありっぽいけど、自分を変えたいって思うこと自体は悪いことじゃないよね」
キャラメルラテはとても甘かった。
口いっぱいに広がるラテの味はとても幸せだった。
ーー…これが彼氏だったら言うことないのに…
彼には彼女がいるから、こんなことを思うなんて、なんて不謹慎なんだろう。
そう思ったけれど、思うだけなら私の自由。そう思って割り切った。