Produce!〜高校デビューしませんか?〜



「あれ、俺の母さん…」

消えるような声で呟いた先輩の声を、私と柊くんは聞き逃さない。



「俺を置いて出て行ったんだ。でも、ずっと気にかけてくれてたみたいでさ。俺はそんな母さんを受け入れられなくて…」


震える声。震える指先。
先輩の絞り出すように話すその声は、耳を凝らさないと聞こえないくらいだった。



「去年、旦那を紹介したいって言われたけど、俺は行かなかったんだ。それでも、結婚式の招待状は届いた。電話だって、何度もくれた…」



引きこもりはずっと続いていたと先輩は続けた。
一応受けた高校も単位の為に行っていたから進級は出来たけれど、あまり行っていない。と。



「このままじゃダメだって思っていたけど、どうしても…」


俺、マザコンだからさ。
そう言って笑う先輩の目にはとめどなく涙が溢れていた。
私も、そんな先輩を見て切なくなって…隣にいた柊くんの裾を掴んで静かに涙を流す。



「…綺麗だな、母さん」


…本当に綺麗です。
優しい目が先輩にそっくりで…
でも、やっぱり先輩のお母さんも、少し切なそうな顔をしている。


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