君が好きだから嘘をつく
「楓はいつもこの位の時間に終わるのか?」

「う~ん、日によって違うかな?営業部だから接待や残業があると結構遅くなるし。今日は何となくやる気なくてちょうど帰ろうとしたところでメールに気付いたんだ。だからタイミングよかったの」

笑って言う私に対して英輔はコーヒを飲みながら、私の顔を伺うようにジッと見ている。

「やる気ないって何で?何かあった?」

心配そうに私の顔を覗き込むように見てくる。
仕事の失敗や行き詰まりという理由ではないから何となく言いにくい。

「う~ん、何となくだよ・・」

「・・・男か?」

カップをソーサーに置きながら視線だけこっちに向けて聞いてくる。
その視線と直球の質問にドキッとした。

「・・・そう」

テーブルに視線を落としながら呟くように答える。なんで英輔とこんな話題になるんだろう?
昔好きだった人に今好きな人の話をするって普通のこと?なんか複雑。
まあ、昨日健吾のことを話してあるから大体どんな状況かわかってくれているけど。

「昨日は迎えに来てくれたんだろ?」

「うん、送ってもらった」

「それでもう今日そんな気分になっちゃうのか?」

そう、昨日は最初何となく重い空気だったけど、途中からは楽しく帰れて幸せだったのに。

今日、健吾と伊東さんの2ショットを見れば気持ちはあっという間に下降してしまうんだ。

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