君が好きだから嘘をつく
「ああ大丈夫だよ、また誘うからさ。それより仕事終わったのか?」

そう・・書類まとめる仕事があるってメールしたんだっけ。

「うん、終わったよ」

「そっか。じゃあ一緒に帰ろう、俺今駅に着くところだから待っているよ」

「え?伊東さんは?」


一緒にいるはずの彼女の存在が気になる。
今日はとてもじゃないけど2人を見て笑うことはできない。できれば放っておいて欲しい。

「ああ、さっき美好の前でタクシーに乗せたよ」

「どうして?何で送っていかないの?それだってチャンスでしょ!」

せっかく2人で会っていていい雰囲気だったはずなのに、そのままタクシーで帰してしまうなんて。
あれだけ落ち込んでいた私が口にするのもおかしいけど、健吾はバカだ。

「ま~な、帰したものはしょうがないだろ。とりあえず仕事終わったなら早く来いよ、改札前で待ってるからさ」

「わかった・・すぐ行く」

「寒いからさ、急ぎで頼む」

「バカ」

つぶやいて通話を切る。
思うことはたくさんあったけど、とりあえずコートとバッグを掴んで営業部のフロアを出る。
エレベーター前まで来たところで、もう一度営業部のフロアに戻り自分のデスクの引き出しからメモ用紙とペンを取りメッセージを書く。

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