君が好きだから嘘をつく
「じゃあ、行ってらっしゃい」

そう言って私の肩をポンと叩いて笑ってくれた。

「はい、お疲れ様です」

咲季先輩に挨拶して営業部のフロアを後にした。

エレベーターを待ちながらコートを着て、バッグから携帯を取り出す。
昨日の夜、英輔から送られたメールを確認する。
場所は前に一緒に行った炉端焼きのお店で、時間はお互い仕事が終わり次第お店に向かう約束になっていた。
真奈美の結婚式の次の日にビンゴの景品を届けてもらってから会ってないけど、メールのやりとりはしていた。
過去振られた人とあんなにこだわっていたのに、友人関係になれるなんて思ってもいなかったし、未だに不思議な感じだ。
考えながら歩いていると、あっという間にお店に到着した。

『いらっしゃいませ~』と店員さんに迎えられ、店内を見渡すとカウンター席に英輔の姿を見つけてそばまで歩く。

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