君が好きだから嘘をつく
すると顔をこっちに少し寄せて、こっちの表情を探るような目を向け口を開いた。

「うん・・・いやあのさ、近藤って奴と柚原ってどうなんだ?仲いいのか?」

「はあ?」

予想外の言葉に思いっきり口が開く。

楓と近藤???
あまりに予想外の話で、質問の意味がわからなかった。
それでも染谷は余程気になっているのか、繰り返し聞いてくる。

「いや、だからさ。今日帰りに誘っているのを見たんだよ。近藤って奴が柚原のことをさ。そばを通りかかった人事の子に名前聞いたから間違いないよ。でさ、そいつが食事か何かかなり積極的に誘っていたんだよ。でも俺そこで課長に呼ばれちゃって、柚原が返事してるとこまで見てないから気になってさ。お前何か知らない?」

染谷は気になって仕方がなかったのだろう。でも俺も今戻ったばかりで全くわからないし、余計なことも言えない。
そんな風に気になって仕方がないくらい、楓のことずっと好きなことも俺は知っている。

「ごめん、俺にはわからねーな。近藤のことは初耳だし、2人がどうってことも聞いたことないしな」

「そうか・・わかった。忙しいとこ悪かったな」

確信もてない返事に染谷は納得いってない様子だったけど、そのまま総務課のフロアへ戻って行った。
でも近藤が楓に?まじかよ・・・。で、あいつらどうしたんだ?

もう一度営業部のフロアを見渡してみたが、近藤の姿もなかった。

染谷が見た通り近藤に誘われて2人で帰ったのか?何ともいえない気持ちになって、スーツのポケットから携帯を取り出し、リダイヤルで楓の携番を出したけどかけることなくそのまま閉じた。

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